がん予防の話

2017.06.25 Sunday

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    不謹慎かもしれませんが、この時期ですので癌、特に癌の予防と早期発見について記したいと思います。
    なぜなら、今が一番話に耳を傾けていただける時期だろうからです。

     

    医学が進歩したといわれる現在でも、「癌」は進行してから根治するのが非常に困難です。
    癌をできるだけ避けたいと思ったら、ヾ發陵祝廟楴錣鬚垢襪、∩甦治療するか、しかありません。

     

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    ◆癌の予防接種
    癌を防ぐワクチンは現在2種類あります。B型肝炎ワクチンと子宮頸がんワクチンです。

     


    ・B型肝炎


    B型肝炎は感染すると、数年から数十年の長い期間を経過した後に肝臓癌を発症します。

     

    さて、ではB型肝炎はどのようにして感染するのでしょうか。
    http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/b_gata.html
    詳細は上記リンクを見ていただくとして、感染の機会は保母から園児、祖父祖母から孫、床屋の毎回消毒されていないカミソリ、消毒されていない針治療やピアスの穴あけ、性交渉など身近に存在します

     

    さらにB型肝炎は人から人にうつりやすく、下記の例を見ていただくと多くの感染者がいるのに驚かれると思います。

     

     

    他人に感染させるだけの

    ウイルスを持っている人

    (HBs抗原陽性率)

    他人に感染させない程度の

    ウイルスを持っている人

    (HBc抗体陽性率)

    日本

    1%

    20%

    香港

    12%

    60%

    世界

    5%

    30%

     

    B型肝炎ウイルスは、感染すると一生体の中に存在し続け、治ることがありません。10年ほど前までは「HBs抗体ができるとウイルスは排除され完治する」と考えられていましたがそれは間違いで、実際は肝臓の中に永久に存在し続け、免疫の状態が悪くなると再び活性化して血中に出てきます。C型肝炎が完治できるようになったのに比べ、B型肝炎は現在の医学では治せないのです。

     

    だからこそ、B型肝炎をうつされないこと=予防接種をすること、が大切です。

     

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    ・B型肝炎ワクチン


    B型肝炎ワクチンは世界中のほとんどの先進国で定期接種化されており、その接種率は90%以上です。
    http://www.know-vpd.jp/hbv/hbv_05.htm

    日本でも世界に20年遅れて2016年10月から新生児だけに定期接種化されましたが、2016年3月以前に生まれた子供は定期接種(無料接種)の対象になりません。今のところ救済策もありません。あくまで「自分の身は自分で守ってね」という政府のスタンスです。

     

    自分は消化器内科医としてB型肝炎予防接種を積極的に勧めており、当院にかかりつけのお子さんは半数以上が自費でB型肝炎予防接種を受けています。

     

    癌の予防に、子供に限らず、大人も、すべての国民がB型肝炎予防接種を受けるようお勧めします。
    (当院では1回5000円(税込)、3回接種で15000円です)

     

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    ・子宮頸がん
    http://www.know-vpd.jp/vpdlist/hpv.htm
    http://www.allwomen.jp/index.html

     

    ・子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)
    http://www.know-vpd.jp/news/2468.php
    https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/hpv?utm_term=.ejPX1wJ2w#.wfb5k69q6


    これに関しては議論かびすましく、自分が専門家でもないため詳述しませんが、以下は事実として記載しておきます。

     

    ・騒がれている副反応は、HPVワクチンを打った人と打たなかった人で発症率に差がない、
    ・世界中で長年接種されてきたワクチンであり、日本以外では安全性と有効性に疑問がない、
    ・たとえあれが副反応だとしても、その確率は10万人当たり2人。一方、未接種者の子宮頸がん発症率は、10万当たり1000人、死亡者は10万人当たり300人(予測値、一生の中で)

     

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    ◆癌の早期発見
    http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html


    日本人は何の癌で死亡しているのでしょうか。

    ・男性;食道癌〜胃癌、肝胆膵の癌、大腸癌、肺癌、前立腺癌、血液の癌
    ・女性;食道癌〜胃癌、肝胆膵の癌、大腸癌、肺癌、乳癌、子宮癌、血液の癌
    これらの原因で全癌死亡の約7割を占めます。

     

    つまり、これら部位を定期的に調べておけば、癌死亡はかなりの確率で避けられると言えます。

     

    ・検診を受けましょう


    なにも高額な人間ドックを受けましょうとお勧めしているわけではありません。
    長野市民なら無料〜低額で受けられる市民検診で十分です。
    https://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/h-kenkou/3215.html

     

     

    何癌が見つかる?

    長野市の対象年齢

    値段

    定期健診(国保など)

    肝胆膵の癌、血液の癌、腎臓癌、膀胱癌

    30歳〜

    無料〜1000円

    肺癌検診(胸部X線)

    肺癌

    40歳〜

    無料〜500円

    肺癌検診(胸部CT)

    肺癌

    40〜74歳

    3800円

    前立腺癌検診

    前立腺癌

    50〜74歳

    1600円

    胃癌検診

    食道癌、胃癌

    35歳〜

    1000円

    乳癌検診

    乳癌

    30歳〜

    1200〜1600円

    子宮癌検診

    子宮癌

    20歳〜

    1500〜2300円

    大腸癌検診

    大腸癌

    40歳〜

    420円

    肝炎ウイルス検診

    肝癌

    40歳〜

    800〜1300円

     

    人間ドックでこれだけ受ければ4万円前後はするでしょう。でも検診なら全部受けても1万円ちょっと。


    これらは皆さんの税金で実施されています。受診しなければ、自分が納めた税金も自分の健康もドブに捨てたことになります。
    面倒くさがらずに、毎年検診! そこでひっかかったら原因精査! をお勧めします。

     

    追記 
    上記の長野市民向けの検診で「あとちょっと足りないな」と思う項目は、腹部超音波検査胃カメラがないことです。
    胆嚢癌と膵臓癌の初期は採血に異常値として現れないこともありますが、超音波検査と組み合わせればより精度の高い検査となります。


    胃のバリウム検査は撮影時の被験者の条件によっては精度の高い検査にならないことがありますが、対して胃カメラで癌を見落とすことはまれです。

    長野市でも胃癌検診で胃カメラを導入しようという思惑はあるようですが、場所と人手不足の中で実現可能性がどれだけあるのかは未知数です。


    胸やけ、げっぷ、お腹が張る、胃部不快、胃痛などの症状がある人は、胃癌検診で満足せずに医療機関で胃カメラや超音波検査の相談をしましょう。

     

    追記◆
    肝炎ウイルス検診以外の全検診は“毎年受けること”をお勧めします。
    大腸癌は発生して、完治できないほど進行するのに数年の年月が必要ですが、毎年大腸癌検診(便潜血検査)を受けていれば、その数年のうちどこかではひっかかります。つまり毎年大腸癌検診を受けていれば、少なくとも“大腸癌で死ぬ”ことはほぼなくなるわけです。

    また、肺や胃、乳房や子宮などでは、今年癌がなくても、来年はあるかもしれません。発生1年目で見つかれば“癌で死ぬ”可能性はかなり低いですが、2年3年と経つごとに生存の可能性は低くなっていきます。
    「昨年受けたから」と安心せずに、検診は毎年受けましょう!

     

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    最後に、


    自分は志半ばで亡くなっていったかつての患者さんを常に思い出します。
    22歳で心臓病で亡くなっていった大学生。息苦しいのに「ありがとうございました」って言ってくれました。
    26歳で胆管癌で亡くなった彼。親御さんは半狂乱でした。
    LDLコレステロール異常高値で治療を勧め続けたのに説得しきれずに40歳代で心筋梗塞で亡くなったお父さん。お子さんがまだ小さかった。
    18歳で、26歳で、35歳で、46歳で、…みな自分の心の中に深く刻みついています。

     

    かかりつけの方で、食道癌で亡くなった初老の男性。
    胸がつかえるというので胃カメラを勧め続けましたが苦しいからとずっと拒否。
    また、長く咳が出ているのにあらゆる検査を拒否し続けたおばちゃん。
    みな癌が治らないと分かると、「早く検査すればよかった」と後悔の念を口にします。
    この四半世紀でそんな人がたくさん。みな覚えています。

     

    「なぜ説得できなかったのか、ほかにいい方法はなかったのか」「なぜ喧嘩になっても無理やり検査や治療しなかったのか」「むしろ強く言って嫌われて転院して、話上手な他の医師に説得されて検査に結び付いたほうがこの人のためだったのではないか」と自分も後悔し続けてきました。

     

    だからたとえ患者さんに嫌われようとムカつかれようと、しつこく説得し、なだめ、すかし、大げさに言ってみたりきつく言ってみたり、優しく褒めたり、いろんな作戦で医学的に正しい(と思う)方向へ患者さんを誘導しようと試みてきました。
    奏功することもあれば、口当たりのいい医師に元へ逃げて行ってしまうこともあればですが、その未熟さもまた反省材料です。

     

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    このブログを読んでいただいているあなたへ。

     

    今回、若くして亡くなった方のニュースを見て悲しい思いをされた方がほとんどでしょう。自分も涙をしました。


    あえてきついことを言わせていただくと、あれは明日の“あなた”です。それも“検診を受けていないあなた”です。

     

    お子さんは何歳ですか?
    この世でまだやりたいことはありますか?

    行きたい旅行先はありますか? 食べたいもの、経験したいこと、趣味は? 仕事は今が完成形ですか?


    いま死ねますか?

     

    仕事忙しいですか?
    仕事と、お子さんの(またはお孫さんの)成人式を見るのとどっちが大切ですか?
    それを見ずに死ねますか?

     

    検診受けましょうよ。
    そんなに大変じゃないですよ。時間だってそんなにかかりませんよ。

     

    最後までお読みいただき、ありがとうございました。